潰瘍性大腸炎の食事療法② 〜油選び〜

大まかな注意点はわかってきました。

  • 脂質が高いものを避ける(40g/日未満)
  • エネルギーは主食で6割とる
  • 水溶性食物繊維を摂る
  • 食品添加物を避ける

 

次に考えるのは、摂取カロリーのこと。

炎症や傷の修復でエネルギーを必要とする夫の体。

いったいどれくらい食べればいいんでしょう?

 

摂取カロリー計算

 

  • 理想体重=身長(m)×  身長(m)×  22
  • 1日に必要なエネルギー量の目安

                     =理想体重(kg)×40kcal

 

夫は身長172cmなので

  • 理想体重=1.72 × 1.72 × 22 = 65kg
  • 1日に必要なエネルギー量の目安

                      =65 × 40 = 2600 kcal

となります。

 

カロリー設定のこともなんとなくわかりました。

 

さて料理をしよう!

 

ん?料理油はこだわらなくていいの?

 

油って何使えばいいの?

「油」と一言で言っても種類は様々。

毎日使うものならやはりここも勉強しておくべきでは?

ということで、油選びのために脂肪酸について勉強しました。

脂肪酸はエネルギー源でもあり、細胞膜やホルモンの構成にも寄与します。

 

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弘文堂『安心レシピでいただきます』より

 

 

動脈硬化予防、血栓予防、高血圧予防、LDLコレステロールの降下などの作用がある

 

   ・n-3系 αリノレン酸(体内でDHA.EPA

体内で合成できない必須脂肪酸

熱に弱く、酸化しやすい

えごま油、亜麻仁油、シソ油、グリーンナッツオイル、青魚、くるみ、かぼちゃの種

     

 ・n-6系 リノール酸(体内でアラキドン酸)

体内で合成できない必須脂肪酸

熱に弱く、酸化しやすい

グリーンナッツオイルは唯一常温保存が可能で、熱に強く、酸化しにくい

摂取の割合はn-3:n-6=1:1〜4が理想。

n-6系は意識せずとも摂れており、現代生活では1:10〜30ほどになってしまっている

n-6系の摂りすぎに注意

コーン油、大豆油、ひまわり油、紅花油、綿実油(めんじつゆ、綿の種子からとれる油)、グレープシード(ヨーロッパぶどうの種子からとれる油)、グリーンナッツオイル(=インカインチオイル、サチャインチオイル)

     

   ・n-9系 オレイン酸

体内で作ることができる

熱に強いので不飽和脂肪酸の中でも調理に使いやすい

オリーブ油、なたね油、紅花油、米油、アルガンオイル、アボカドオイル、アーモンドオイル、ピーナッツオイル

 

大きなエネルギー源ではあるが、摂りすぎはLDLコレステロールを増加させ、動脈硬化の原因にもなる。

バター、ラード、ヘッド、肉の脂身、ショートニング、マーガリン、パーム油、ヤシ油、ココナッツ油

 

 

と、こんな感じです。

この油に関して失敗談があります。

 

本を読み、とにかくn-3系をとらねば!と思いスーパーでシソ油を購入しました。

 

今回のことがなければ、スーパーの油コーナーで「お徳用」以外の場所に目をやることはなかったと思います。

ちゃんと置いてあるんですね。シソ油。

 

早とちりしてシソ油が酸化しやすいのも熱に弱いのも知らず、始めは普通に炒め物とかに使ってしまっていました。。(もったいない。。)

 

使い始めて2ヶ月ほど経ち、なんだか油絵の具みたいな香り?が強くなってる気がする。。

と思い調べてやっと気付いたんです。

 

酸化しやすく熱に弱いシソ油はサラダなどのドレッシング向きでした。

 

こうして失敗もしつつ、今では油は毎回表示をよくみて買うようになりました。

ちなみに今使用しているのは

AJINOMOTOの「アマニブレンド油」


 
コーン油が主ですが、アマニ油が30%ブレンドされています。

炒め物に大さじ1杯程使うこともありますが、

夫のお腹は無事です^_^

 

次の記事では、実際日々食事を作る上で配慮している点(夫の場合の禁忌食材や調理方法)について書いていきます。

 

潰瘍性大腸炎の食事療法①

発症から退院までに42kgまで体重減少した夫。

退院後に必要になったのは食事療法でした。

 

とはいっても

今までと変えなきゃいけないことはなに?

何に気をつければいいの?

食べちゃいけないものはあるの?

とにかく0からのスタートです。

 

潰瘍性大腸炎の食事療法

〜何を心がける?〜

 

  1.  低脂肪食

 

腸管安静を保つには脂肪を制限することが大切です。

 

  • 脂肪は腸管の蠕動運動を刺激
  • 脂肪の消化に必要な胆汁酸が再吸収しきれず腸管に刺激を与えると、下痢や腹痛の原因に
  • UCの脂肪摂取量の目標は40g/日未満

 

 

  2.  高エネルギー食 

 

炎症による必要エネルギーの増加する上、粘膜の治癒にもエネルギーを必要とするため、高エネルギーが必要となります。

 

脂質でエネルギー摂取は上記の通り好ましくありません。

 

  • 主食の米や餅、麺は比較的安全で効率の良いエネルギー源
  • 主食が食事の6割程度を占めるのが理想

 

ちなみに夫はお酒が大好きです。毎日呑みます。お米は一番最後派です。

 

体力が落ちているときはお酒とおつまみだけで、お米にありつけず疲れて寝てしまうことが多々あります。

 

どうにかお米に辿り着かすこと、無理そうな日はおつまみで何とかお腹に優しくエネルギーが摂れるものを出す必要があります。

 

その工夫についてはまた後の記事で書きたいと思います。

 

  3.  低刺激食

 

ここでは食物繊維についてです。

食物繊維は水溶性、不溶性に分けられます。

 

  • 水溶性食物繊維を積極的に摂る

         ・便の水分を吸収し、下痢を軽減

         ・胆汁酸(腸管を刺激)吸着能

         ・大腸粘膜のエネルギー源になる

 

水溶性食物繊維って何がある?

りんご、バナナ、桃、芋類、キャベツ、大根

  • アルギン酸 ネバネバ系で傷を治す効果あり

昆布、わかめ、めかぶ

  • ガム質

大麦、オーツ麦など

こんにゃくの原料(こんにゃく自体は不溶性)

 

  • 不溶性食物繊維は活動期は避ける

        ・胃や腸で水分を吸収して膨らみ、腸管を刺激して蠕動運動を活発にさせる。腸管への刺激が強く、下痢や腹痛の原因になりやすい(便秘の人の味方)

 

不溶性食物繊維って何がある?

大豆、ごぼう、小麦ふすま(小麦の外皮部分=ブラン)、穀類、豆類

大豆、ごぼう、小麦ふすま、穀類

  • リグニン

ココア、小麦ふすま、穀類、豆類、完熟野菜

  • キチン

きのこ、甲殻類のから

 

  4.  食品添加物を避ける

 

現代の生活で食品添加物を摂取しないというのは難しいですが、気にしてある程度避けることはできます。

特にUCへの関与が疑われているのが増粘剤(カラギナン)

 

増粘剤は15品目ほどあり、1品目のみ添加した場合は品質表示に記載する必要がありますが、2品目以上の場合はその必要はありません。

 

そのため、ただ「増粘剤」だけ書いてあるものは、カラギナンも含まれるかもしれないということです。

EUや米国では既に使用禁止の流れになっていますが、日本ではまだ一部の自治体や業者が自主的に使用を控えるに留まっています。

 

さて、気をつけるべきは

  • 脂質が高いものを避ける(40g/日未満)
  • エネルギーは主食で6割とる
  • 水溶性食物繊維を摂る
  • 食品添加物を避ける

ということがわかりました。

 

次の記事では具体的なカロリー設定や料理の必需品「油」について書いていきたいと思います。

 

 

 

 

潰瘍性大腸炎で1回目の入院と治療

経過の続き。。

夫は2ヶ月続いた下痢、血性の粘液便、更には基本薬である5ASAへのアレルギー反応のため熱発。。入院となりました。

 

治療としては、まず炎症を抑え、寛解導入するためのステロイド静注。そして絶飲絶食でした。

始めのうちは体が辛すぎて、絶飲絶食の辛さはあまり感じなかったようです。

 

そして、食事へのステップアップの前に出されたのがエレンタールという成分栄養剤でした。

 

エレンタールってどんな栄養剤?

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たんぱく質アミノ酸まで分解されていて、脂質をほとんど含まないため、消化に負担がかかりにくく、ほぼ完全に吸収される栄養剤です。

 

クローン病寛解導入効果、寛解維持効果が認められ、厚生労働省研究班の治療指針でも第一に選択すべき栄養剤とされています。

 

粘膜上皮機能改善作用のあるグルタミン、アルギニンや炎症性細胞の活動抑制作用があるヒスチジングリシンなどが含まれています。

 

経鼻チューブもしくは経口にて摂取し、経口用に9種類の専用フレーバー(グレープフルーツ、青りんご、マンゴー、ヨーグルト、コーヒー、フルーツトマト、オレンジ、パイナップル、さっぱり梅味)もあります。

 

〈夫による美味しい順ランキング〉

1位 パイナップル

2位 ヨーグルト

3位 グレープフルーツ

4位 フルーツトマト

5位 オレンジ

6位 青りんご        一瞬美味しい

7位 マンゴー

8位 梅    

8位タイ   コンソメコンソメもあるそうです)

9位 コーヒー         美味しくない。。

とのことでした^_^;  好みは人それぞれですが。

 

約1ヶ月の療養中、もともと50kgほどだった夫の体重は42kg(身長172cm)まで減っていました。しかし、症状は徐々に落ち着き、ステロイドも退院できるほどまで減量できました。

 

さて、基本薬である5ASAが使えない夫。

選択された薬はアザニンという免疫抑制剤でした。

 

アザニンってどんな薬?

一般名はアザチオプリン、アザニンというのは商品名です。ステロイド薬から切り替え、寛解維持に使われる免疫調節薬です。

自己の細胞を異常に攻撃してしまう過剰な免疫反応を抑える働きがあります。

 

アザニンの副作用は?

免疫系の働きを抑える作用の反面、感染症へのリスクがやや上がります

  • 血液障害

骨髄の働きが抑えられ、白血球、血小板などが減ることがあります

  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 脱毛
  • 口内炎
  • 頻脈
  • 全身倦怠感
  • 肝障害  など

 

夫の場合、全身倦怠感が主に出ているような気がします。

 

退院後、医師と相談しながらステロイド薬を漸減し、アザニンを主軸に病気と付き合っていくこととなりました。

 

潰瘍性大腸炎(UC)の治療〜第一選択薬にまさかのアレルギー反応〜

2ヶ月の下痢、血便の後、やっと病院を受診した夫。

潰瘍性大腸炎の診断にて、まずは基本薬である5-ASA製剤が処方されました。

 

が、、飲んでも症状は良くなるどころか悪くなるばかり。。

 

再度受診したところ、5-ASA製剤を増量することとなりました。

 

しかし、その翌日、ついに夫は仕事に行けないほどに。。

 

当時結婚前だったため、仕事を休んだ夫の家にお見舞いに行きました。

そこにはぐったりしてベッドに横たわる夫。

熱発38.8度。

これは寝てる場合じゃない!

私の車で別の病院へ向かいました。

立つのもやっと。

歩くのに介助が必要なほどでした。

 

血便も続いていたためそのまま入院となりました。

検査の結果、UCの第一選択薬である5ASA製剤のアレルギーであることがわかりました。

 

「薬を飲めば、今までとそれほど変わらない生活ができる。うまく付き合っていこう」

その「薬」のアレルギーがでた。。

これからどう治療していくんだろう。。

私達を不安が襲いました。

 

潰瘍性大腸炎(UC)ってどんな治療法があるの?

多くの場合、薬物療法だけでコントロール可能と言われています。

ではどのような薬を使うのか?

 

潰瘍性大腸炎の基本薬は5アミノサリチル酸(5ASA)製剤と言われる炎症を抑える薬です。それほど強い薬ではないですが、軽症であれば5ASAのみで寛解導入、寛解維持が可能な例が多いようです。

この基本薬を中心に薬や治療を組み合わせていきます。

 

軽症  5ASA経口剤

軽〜中等症  5ASA注腸剤や座薬

無効例、重症例  ステロイド薬経口や点滴

ステロイド薬の減量や中止、寛解維持を目的に

免役調節薬(自分の体を過度に攻撃してしまう免疫系の働きを抑える)

ステロイド薬への依存性や抵抗性があり、免役調整薬でもなかなか改善しない中〜重症例    生物学的製剤(炎症を強める働きがある細胞を攻撃し、増殖を抑え、炎症を抑える)

 

その他の治療法

  • 血球成分除去療法
  • 外科的治療

 

ステロイドは強力な助っ人ですが、長期にわたる使用は副作用が作用を上回ってしまうリスクもあります。そのため、あくまで寛解導入のために用い、症状改善とともに医師と相談しながら漸減し、その他の薬物療法に移行する必要があります。

 

ステロイドの副作用ってどんなもの?

  • ムーンフェイス(顔がむくんで丸くなる)
  • 不眠
  • 感染症
  • 食欲増進.肥満
  • 皮膚症状
  • 糖尿病
  • 骨粗鬆症       など

 

このように重症度や薬との相性によって、治療の組み合わせは様々です。そのため、薬の種類や減らす量や時期など、担当医との相談がとても大切です。

 

5ASAにアレルギー反応がでてしまった夫にもまだまだ選択肢はありました。

次の記事ではその後の治療の流れについて書きたいと思います。

 

潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis)とは?

プロローグ

潰瘍性大腸炎とは?〜

 

夫は2ヶ月も血便が続き、1日10回近くトイレに駆け込んでいました。

 

痔?にしてはさすがにおかしい。

そうしてやっと病院を受診するに至ったのです。

 

私「病院どうだった?」

夫「潰瘍性大腸炎だって。難病らしい。でも、薬飲めば、ほぼ今まで通り生活できるらしいよ」

難病という言葉に一瞬ヒヤッとはしましたが、薬で調整できると聞き、

私も夫も「病気とうまく付き合いつつなんとかなるかな」という思いでいました。

 

この時はまだ2人ともこの先の苦難を知る由もなかったのです。

 

 

潰瘍性大腸炎ってどんな病気?

 

直腸から口側に向かって粘膜にびらんや潰瘍を形成する大腸の炎症です。

 

大腸、特に直腸の粘膜、粘膜下層を侵します。

多くの患者は寛解と再燃を繰り返します。

 

現在、はっきりとした原因はわからず、まだ完治できるような治療法もないため、難病に指定されています。

 

近年この病気は増加の一途を辿っています。

 

発症は20〜30代が最多で、夫も31歳で発症しました。

 

どんな症状なの?

  • 下痢を繰り返す
  • 粘血便
  • 腹痛
  • 食欲不振
  • 発熱
  • 体重減少
  • 関節炎
  • 虹彩
  • 皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症など)

 

夫も下痢の症状で1日に何度もトイレに駆け込んでいました。血便も出ていました。体重はもともと50kg程。BMIだと17の痩せ型です。

 

急な便意がいつ来るかわからず、常にトイレに行きたい感覚もある。駆け込んでも何も出ないこともある。。間に合わない事態が起きた日には大層落ち込みます。30代社会人。。辛いと思います。

 

診断基準は?

  1. 症状    繰り返す下痢、粘血便
  2. 内視鏡検査         大腸粘膜の浮腫やびらん、潰瘍
  3. 生検組織学的検査    炎症性の変化

以上を総合的に見て確定診断されます

 

病型分類は?

病変の広がり方でタイプが分かれます。

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図:「潰瘍性大腸炎クローン病がよくわかる本」講談社より

 

夫は直腸炎型の診断だったそうですが、症状がひどかった時期は小腸の手前まで炎症があったようです。

 

病期分類は?

  • 活動期

血便、内視鏡で炎症所見を認める状態

上記症状が落ち着いている状態

 

臨床経過による分類は?

活動期と寛解期を繰り返すもの

  • 慢性持続型

発病し、内科的治療を受けたにも関わらず6ヶ月以上寛解しないもの

  • 急性激症型

急に増悪し症状が悪化していくもの

  • 初回発作型

発病したが、内科的治療で寛解し、その後再燃しないもの

 

重症度分類は?

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図:「潰瘍性大腸炎クローン病がよくわかる本」講談社より

 

夫は発症時、1日10回以上の血便があり、38度台の発熱も認めていました。2ヶ月続いた血便により貧血も進んでいました。

発症時の状況と治療については次回の記事で書きたいと思います。


私が勉強に使っている本の一つです。 症状のことから治療法までとてもイラストや表でとても分かりやすく解説されています。